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◆職場の「困った人」への対処法 |
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職場には同僚に対してフレンドリーで仕事志向な人ばかりがいるわけではありません。それどころか、実際の職場は何らかの形で変わった人、困った人、あるいは生産的でない人の寄せ集めであり、そのために本来あるべき生産性や能率、働きやすさ、仕事上の成果が阻害されていることが少なくありません。言い換えれば、あなたの上司や部下、あるいは同僚が必ずしも目的合理的に行動してくれるわけではないのです。
職場における人間行動や組織の諸問題について実際的な観点から心理学の方法で研究しようとする「産業・組織心理学」でも、対価がなくても組織のために自主的に行うとされる「組織市民行動(Organizational citizenship Behavior)」と共に、最近では「組織報復行動(Organizational Counter-productive Behavior)」の研究が展開されてきています。これは、まさしく組織の目的や方向性、あるいは規範に反する行動を指しています。
本稿では、「困った人」をいくつかのタイプに分け、その心理的な背景(性格類型や行動特性など)を明らかにし、そうした人が職場にいる場合、どう対処したらよいかを具体的に解説していきます。なお、本稿では、ヒューマン・アセスメント(以下「HA」という)による行動分析の考え方を1つの大きな柱として活用し、解説していきますので、最初にこの説明をしておきます。HAでは、12ないし18程度の行動ディメンションを想定し、それによって職務行動を分析・記述していきます(JEXS版は16項目)。この行動ディメンションのリストの特徴はそれが弱み(または強み)である場合、その他の「行動評価着眼点」も弱み(または強み)として現れるということです。例えば、「思いつき的で一貫性がない」人がいたとして、その人は「計画組織力」が弱みとなることになり、「場当たり的、あるいは手当たり次第に仕事を進めてしまう」行動も取ると予測されます。HAは行動予測の言語体系と言えます。
また性格心理学の分類をもうひとつの柱として参考にします。性格心理学とは、精神分析などの研究成果を踏まえて、パーソナリティ研究として確立された心理学の1つで、米国精神医学協会のマニュアルに体系化されています。
では、具体的にどのようなタイプがあるのでしょうか。いくつかのタイプを想定し、タイプごとの対処法を解説していきます。
タイプ1 やる気も覇気もないけど、「プライド高なベテラン」(部下)
<心理的背景>
世界的な潮流として自尊感情が高まっているそうです。日本でもバブル期(89年~93年頃)以降に大学を卒業した人たちの傾向として自尊感情が高まっているように思います。それ以前からも自尊心の高い人、言い換えれば、高慢な人、傲慢な人、あるいは自信過剰な人はいたわけですが、近年では特にそういう人たちが増え、その弊害が目に付くようになりました。その背景として、自尊心を一旦叩き潰して組織との一体化を図るという新人教育を企業がやらなくなったことがあります。企業は成果を出せる人だけ残ってくれたらいいと考えるようになり、忠誠心だけの人材を重用しなくなりました。その反面、根拠もなく自尊感情の高まった若者を野放しにするようになりました。彼らには長幼の序もほとんどないかもしれないです。
性格心理学では、こうした人を「自己愛性」と呼んでいます。このような人たちは、万事余裕綽々で構えようとし、尊大に振舞います。外見はキザで自分本位、時に大物気取りをし、自意識過剰です。自己に対する評価が高く、時に誇大妄想的な傾向が見られることもあります。仕事では雑用を嫌い、自分が特別扱いされることを当然と考えています。
行動上の傾向としては、基本的に自慢話、自分中心の話を好み、いつの間にか自分自身についての話題に流れていく。時に虚構的な要素を含む自慢話をする。また自尊感情が強いので、問題が起こっても自分が悪いとは基本的に考えません。友人や身内、時に知人などを引き合いに出し、我がことのように自慢をする、などです。
個人的な体験では、ロンドンに留学したことが本人の人生における最大のトピックスという人がいました。典型的なナルシストで、話をしていると、いつの間にかロンドンの話になっていました。最初は相槌を打ちながら聞いていましたが、だんだん不快になってきました。それでも、本人の自慢話は終わることがなく、相手を変えてえんえんと続けられるのでした。
<対処法>
彼らの嫌がる雑用をさせるには「これをやっておくと、この会社のことだけではなくて業界全体のことがわかるようになるよ」とか、そういう言い方をしないと、食い付いてこないでしょう。このタイプは、自分が持ち上げられることに弱いので、おべっかを使ってでも、持ち上げると、動いてくれることが多いです。
また自慢話については相手をしていてはキリがありません。適度に距離を置き、相手にしないこと、遠巻きにして反応しないことです。例えば、メールで送られてきた場合などはその部分に反応せずに返信することです。
タイプ2 ウッカリミス多発の「あわてんぼ中堅」(部下)
<心理的背景>
明朗快活で、人当たりが良く、共感性の高いパーソナリティの人なので、採用試験には受かりやすいです。周囲からの人物評はおしなべて高いです。こうしたタイプは「パーソナリティ理論 」の分類によれば、「循環気質」とされています。しかし、こういうタイプの人は、物忘れが多く、何事につけてアバウトになってしまいます。
HAの考え方では、こういう人は「計画組織力」と「管理統制力」の欠落した人ということになります。程度によっては問題解決力も欠けているかもしれません。こういう人は、上司に確認を取ったり、上司や同僚に報告をしたり、情報を共有化することが苦手です。自分勝手に物事を専断的に進めてしまいがちですが、あまり悪意はありません。行っておくべき連絡もしていないことが少なくなく、仕事上の抜けや漏れが多いです。詰めが甘いので、本人にしてみればやったはずなのですが、思うように進んでいないこともしばしばです。上司や同僚は業を煮やして本人を恫喝することもありますが、本人はあっけらかんとしていて、のれんに腕押し、気持ちのこもらない謝罪を繰り返します。
<対処法>
こういう人が部下である場合、1日何回も手帳や日程表を前にして、やるべき事項、処理すべき案件を確認し、そのためには事前に何をすべきかを明示します。またその際、指示するのではなく、本人の口から言わせるように持っていきます。高圧的に出ると、逃げてしまう可能性があるので、少なくとも半年程度(既に問題になっている場合は3ヶ月程度)は穏やかに話し合うようにしてみるべきです。根はそんなに悪い人間ではないので、スケジューリングし、歯止めをかける方策を一緒に考えてやれば、素直に従ってきます。しかし、程度の差があり、致命的な場合、こういうサポートをしても修復できないこともあります。そういう場合は配転するとか、場合によっては解雇するしかないでしょう。そもそもデスクワークには向かない人だからです。
実は私もこういうタイプの人をアシスタントとして雇っていたことがあります。人間的に素晴しいので、どこに同行しても受けがいいのですが、しばしば連絡がつかなくなる、依頼した事項を進めていない、勝手に物事を進める、行った仕事の顛末を報告・連絡しない、追及されると、その場凌ぎの嘘をつくという悪い癖がありました。最終的には解雇せざるを得なくなりました。人がいいけれども、先読みできないという意味では先祖帰りの一種かもしれないです。
タイプ3 プレゼンは上手でも、やり抜けない「舌先上司」(上司)
<心理的背景>
プレゼンは上手いが、実際にはやり放しの人がいるものです。喜怒哀楽の表現がややもするとオーバーで、人目を引くように外見にも懲りたがります。ブランド物が好きで、男女とも香水やコロンを好むこともあります。普段からハイテンションで明朗快活、社交的で、受けを狙った言動や態度を取ります。気前がよくて部下を連れてよくおごってくれたりもします。仕事面では仰々しいネーミングを好みますが、企画倒れになることが多く、問題点を少し指摘されただけですぐに尻すぼみになってしまいます。計画を練って推進していく粘り強さに欠け、移り気で、気分屋です。性格心理学では、このような人を「演技性」と分類しています。
HAの考え方では、インパクト、対人感受性があるけれども、計画組織力や管理統制力がないということになります。表記法としては、次のようになります。
○ インパクト 対人感受性
▲ 計画組織力 管理統制力
<対処法>
性格心理学によれば、こうしたタイプは気宇壮大な計画を考え出し、吹聴するわりに実現力は乏しいということになっています。もし気分屋上司である場合には、上司が苦手にしている行動、すなわちスケジューリング、役割分担、進捗状況のチェックなどを部下がバックアップしないといけないでしょう。ただし、状況によっては適度に聞き流し、関わらないことも処世となろうという指摘もあります。
HAの考え方では、行動ディメンションを活用して対象者の行動を予測し、また改善行動を取らせる方策を読み取ります。この場合では、計画倒れになりやすい部分を周囲が埋め合わせをしてフォローすることが望ましいということになるでしょう。本人が計画性を身につけるようになれるかどうかははっきりしませんが、計画組織力は比較的習得しやすい行動ディメンションだと言われています。
私の経験では、外資系コンサルタント会社でマネジャーをしていたことがあり、その時の上司が典型的な演技性タイプの人物でした。プレゼンが神業のように上手く、ある意味で神々しいものがありましたが、中身がなく、発言の根拠が脆弱でした。プレゼンの上手さと説得力でいつも土壇場を切り抜けていましたが、詐欺的な言辞を確信犯的に弄し、平気で部下を踏みにじる人でした。そういう意味では、「説得対話力」と「コミュニケーション力」に秀で、「対人感受性」の欠落している人でした。
タイプ4 現場には冷淡で、経営陣にはカッコつける「権威主義的な上役」 (上司)
<心理的背景>
このタイプも演技性に該当します。「被暗示性」が強く、周囲からの影響を受けやすく、後先のことを考えずにその場の雰囲気に合わせたり、期待があると、過度に応えようとします。場当たり的で、確固たる自分の信念がないです。幹部会議など拍手喝采を受けることが目的化しており、その場での受けだけを狙った発言をしてしまうので、後になって実行しきれないことになります。
HAで評価すると、仕事に関しての「計画組織力」と部下に対する「対人感受性」に欠け、首尾一貫性や自主性を要素とする「自律一貫性」にも問題があるということになります。
<対処法>
このような上司の場合、部下はそれを上手くサポートするか、もしくはそういう受け狙いが部下にとって受けがよくないことを自覚させるべきということになります。また部下はいくらその期待に応えてもキリがないでしょう。したがって、これが限界だということをオーバーに演出して訴えるしかないのではないでしょうか。
私の経験でも、こういうタイプの上司は多いように思います。上部組織(本社など)には弱腰で、安請け負いするし、自分の評価には極端に敏感でした。それでいて、上に対する約束が後でどれほど職場(私の場合は支店)のプレッシャーになるか、考えることができない、あるいは考えても上の意向に背けないのです。しかし、喉元過ぎれば熱さ忘れるで、放置していても部下を咎めるようなタイプではなかったです。
タイプ5 依頼ごとをため込み、応答のない「仕事滞留者」(社内関連部署)
<心理的背景>
人によって仕事を安請け負いしておきなながら一向に進捗しないということがあります。これにはやろうとする意思がありながら進めないという場合(管理統制力の欠如-仕事の抜けや漏れ)と、そもそも進める意思がないという場合(意図的な怠業)があります。ここでは後者の場合を取り上げます。
こうした行動を取る人の性格を「拒絶性」または「受動攻撃性」と言います。彼らは自分の主体を阻害されるのが嫌で、天邪鬼な行動を取ります。正面切って反抗せず、相手に咎められない範囲で手抜きをします。斜に構えたひねくれ者で、いじけやすく、「抵抗する人」です。わざと手を抜くだけに一番やりにくい人たちという指摘もありますが、私はそこまでひどい位置づけにすべきか、多少疑問があります。
HAでは、このような行動を取る場合、「自律一貫性」の過剰(too high)と「柔軟性」の欠如という捉え方をします。行動ディメンションによっては、それが過剰に発揮されることによって問題行動を引き起こすことがあります。
<対処法>
なかなかOKを出してくれないことになりますから、機嫌を見ながら物事を申し出るのがいいでしょう。ただし、機嫌がいいことはそう多くありません。さりとて、反対する理由をはっきりと持っているわけではないので、突破することは可能です。
私の経験では、大学院に進学後にこういうタイプの院生が結構いました。プライドが高く、いつもああ言えばこう言う式で緩やかな反抗を試み、ヨイショするような接し方をすると親しげに甘えて来ますが、少しでも強く言い放つと反抗的な態度を取ったり、「メールを自動削除します」と態度を急変させてくる、といった感じでした。人のために何かするということがなく、自分本位なので、大学の教員なんて向かないと思ったのですが、自分にとってキーマンになる人には巧みに必死でしがみつくので、本人には不本意なレベルの大学でしたが、しっかりポストも得ていました。
また心理テストを開発する会社のシステム担当者だった人も偏屈で、常にネガティブなことを口にして、緩やかな反抗をするタイプでした。確たる根拠もなく、雰囲気で反駁を試み、それによって存在感を示していました。強硬な態度には弱腰で、逃げの姿勢を取っていました。
タイプ6 何でも考えずに丸投げする「当事者意識ゼロ人」(社内関連部署)
<心理的背景>
当事者意識のない人はHAで表現すると「自律一貫性」のない人、もしくは責務感の欠けた人ということになります。HAを実施したデータを因子分析という手法で解析してみると、興味深い結果が得られます。どういうものかというと、因子Ⅰが「課題解決力」、因子Ⅱが「対人影響力」、因子Ⅲが「タフさ」、因子Ⅳが「責務感」になります。ここで言う「責務感」とは、行動ディメンションの「自律一貫性」のことで、英語で言い換えると、Independency になります。自主性、一貫性、当事者意識、上位者の補佐、同僚への支援などを指しています。
このような自律一貫性の欠けた人の心理は、仕事上の責任を負いたくなく、責任追及されることはとにかく厄介だというものです。したがって、何かを依頼されても自分の判断をなるべく加えずに、また速やかに別の人に丸投げしてしまうということになります。つまり、責任の所在を自分以外のところに移転させてしまうのです。
また行動を起こせないという点に着眼すれば、「イニシアティブ」が足りないという見方もできます。受け身に回って身を乗り出して行動できない、そういうタイプはアセスメントをしていると、しばしば見かけます。
性格心理学の分類では「依存性」になります。依存性のある人は、自分の主張をまるで出さず、存在感が薄く、目立たないようにしています。自己に対する評価が極端に低く、自分以外の誰かに何とかしてもらおうとします。依存する相手さえいればお気楽で、楽しげで、先行きに対して楽観的な態度を見せ、協調性だけはすこぶる高い、というのがプロフィールです。
こういう人たちが多くなると、職場は私語が絶えず、お気楽モードになり、組織としての生産性は低くなり、仕事志向を持つスタッフはうんざりして、やる気を失ってしまうことになります。
<対処法>
依存性があり、当事者意識のない人に仕事を頼む場合、責任の所在がその人にあること、期限や成果責任がその人にあることをはっきりさせた上で依頼しないといけないでしょう。そうでないと、仕事や案件そのものに手をつけずに、どこかに振ったり、逆に依頼主に差し戻してくる懸念があるからです。ともかく強い態度で臨まないといけないでしょう。
臨床心理学者の矢幡洋氏は、こうしたタイプが上司だった場合、自己研鑽に励んで組織に背を向けよと手厳しく批判しています。私はそこまでするかは決められないと思いますが、仕事がやりにくいことは確かです。彼らは仕事そのものはしないですが、よきムードメーカーであり、存在意義はあります。
私の経験では、大手商社を早期退職して社会保険労務士になり、当時人事コンサルタント会社として行動を共にした人にこのタイプの人がいました。人当たりがよくて常に笑顔を絶やさない好骨漢でしたが、仕事そのものはほとんどやらないし、極端に仕事の遅い人でした。結局、一緒に行動することが難しくなり、その後のメンバーが起業することになりました。大企業では通用しますが、仕事そのものをしない人は自活できないです。
タイプ7 何気ない一言で周囲を傷つける「口害的な同僚」(同僚)
<心理的背景>
仕事は上手く行っているのに何気ない一言で傷つけられ、職場に行くことが憂鬱。こういうことは少なくないことです。こういう人をHAでは「対人感受性」の欠けた人ということになります。人の話を遮って自分の言いたいことを言ったり、感情的に逆撫でする発言を平気でします。
性格心理学では、「サディスト」と分類されています。競争性が高く、他人にフレンドリーに接しようとする配慮がまるでなく、顔つきは険しく、威嚇的であり、とっつきにくく見えます。暴力的な武勇伝を誇らしげに語ったり、相手を屈服させるような話題を好みます。目の前にいる人はもちろん、自分とは関わりのない人でも、侮辱できる場合はすかさず高笑いと共に一笑に付します。
<対処法>
いくつかの対処法が考えられます。先ず侮辱されても無反応でいることです。それによってやり過ごせる場合があるからです。反応すると、それによってサディスト的な言動が増長される可能性があります。次に強い拒絶反応を示し、それによって自尊心を守ることです。サディストの動機は相手の自尊心を傷つけることにあります。受け身になっていることは精神衛生によいことではありません。また第三者を共通の敵にして攻撃をそらすことも考えられます。経験的にはこれは効果的です。最後に自尊心を捨てて隷従していくこともありうるでしょう。サディストはこういう部下を好みます。
私の経験では、昔、個人のコンサルタントとして商売を始めたときに資金力があり、設立会社の社長となった人がこのタイプでした。他人の失敗談をあげつらいながら高笑いすることはしばしばでした。無能な人物を手厳しく非難し、徹底的にやり込めました。それでいて、学歴コンプレックスが強烈だったり、劣等感も強い人でした。大学関係にもこの手の人は結構いました。指導している学生が困っているのを見て、密かに喜んでいるようなところがありました。助言する場合も余計に行き詰まり、困るような方向に仕向けることもありました。
タイプ8 何となく元気のない抑うつ型の部下 (部下)
<心理的背景>
最近、労働基準監督署の人の話を聞く機会がありました。この6年ほどの間、職場でうつになる人が急増しているそうです。企業が成果主義へと大きく舵取りしてきました。労働関係のトラブルもこの数年、急増し、既に労基署のキャパシティを超えているという指摘もありました。
一般にうつになる人の特徴として、真面目な人、責任感の強い人が多いと指摘されています。必ずしもそういう指摘は正しくありません。むしろ切り替えが苦手で、自分自身を自ら追い詰めていく人だと考えます。達成意欲はそれなりに高いことは確かですが、中には生来の怠け者的な性格がある場合もあります。いずれにしても、燃え尽きてしまい、失速し、気力を失ってしまうのです。
<対処法>
うつ傾向や過労状態 は過労死、過労自殺の前兆でもあります。一般的には励まして頑張れということは逆効果ですし、うつの人はオンとオフの切り替えが苦手であるために失速していることがほとんどです。なので、「気持ちを切り替えないといけないよ」とか「充実した週末、休暇を過ごしているか」と確認してやることです。そうすることによって、意欲的な状態を取り戻すきっかけが得られることが多いです。なお、飲み誘うのはよくないです。うつには飲酒と喫煙は非常に悪いです。
タイプ9 規則やルールに厳格で融通が利かない「シャチホコ」マン (関係部署)
<心理的背景>
生真面目で、いずれかというと仏頂面、喜怒哀楽がはっきりとせず、服装はいつも同じようなもの。型にはまった印象を与え、ばか丁寧な敬語を好んで使う。慎重で、上下関係に忠実、社内の規則に常に神経を使っている。こういうタイプを性格心理学では、「強迫性」と呼んでいます。この人たちの行動原理は、「外部の秩序―規則やルール―にとことん正確に合わせる」ことであり、完璧にそれをやり遂げようとします。
このような人が関係部署だと、とにかく細部にこだわります。印鑑の捺し方に始まり、書類としてのつじつまなど本質と関係しないことにまで神経を払います。納得するレベルは非常に高いですが、書類の受理は簡単には行きません。
HAでは、「管理統制力」が過剰ということになります。慎重に検討するという意味で「問題解決力」があると言えます。しかし、一方で、「柔軟性」と「計画組織力」が不足している恐れがあります。また物事を決めかねるという意味では「決断力」が不足しています。
<対処法>
対処法としては細部まで合わせていくしかないでしょう。それが正攻法です。ただ、その人のこだわる場所や箇所があり、そこに注意しながら対処していくしかないでしょう。また一方で、細部にわたる要求があっても、アバウトに対処し続けるという手もあります。そうすると、相手が期限などを意識して協力してくれる場合もあります。また慎重すぎる相手を説得して物事を進めていかないといけないでしょう。根は真面目で、仕事上の成果を出したいと考えているからです。また上には弱い人なので、その人の上司や上位者を動かして物事を進めていくことも考えられます。
職場における「困った人」の研究は精神医学ないし精神分析の立場から相当なされてきています。その場合、米国精神医学会のDSM-Ⅳ(米国精神医学協会診断マニュアル第4版)に沿ったものとなっています。本稿でいう「性格心理学」とは主にこのような立場のものを言います。
【表】行動ディメンション
参考文献
1. 矢幡洋『困った上司、はたまた迷惑な部下』(PHP新書)
2. 小此木啓吾『あなたの身近な「困った人たち」の精神分析―パーソナリティそのミクロな狂い』(新潮社)
3. 佐野勝男『性格の診断-人を見抜く知恵』(大日本図書)
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